家元の寵愛≪壱≫
「……隼斗……さん?」
後ろから抱きしめる俺の方へ
ゆっくりと振り返るゆの。
俺は彼女の唇にそっと唇を重ねた。
半月ぶりのゆのの唇。
柔らかくて甘美な感触。
俺は不安を掻き消すかのように
彼女の身体をくるりと向きを変え、
全身の温もりを感じながら深いキスを。
すると―――――、
俺の胸に添えられた手に力が入る。
次第にその手は突っ張るように伸ばされ
強引に唇も身体も離された。
放心状態の俺。
何が起きたんだ??
ゆのが俺のキスを……拒んだ。
目の前の現実を受け入れる事が出来ず、
ただただ呆然と立ち尽くす。
すると――――、
「どうしたんですか?いつもの隼斗さんじゃないですよ?」
「……えっ?」
「怖い……顏…してます」
「………」
「私、何かイケナイ事をしたんでしょうか?」
眉間にシワを寄せ、俺の顔を覗き込む。