家元の寵愛≪壱≫


『イケナイ事』

俺は心の奥がズンッと重く沈んだ気がした。



「なぁ…」

「はい?」

「さっきの…」


俺は小さく息を吐き、


「さっきの男は誰だ?」

「え?………あっ、白川くん?」

「白川?」


無意識に片眉がピクッと反応する。



「えぇっと、大学が同じで…合宿が一緒だったんですけど…」



少し困り顔のゆの。

大学が同じで合宿を一緒に…。

――――そうだよな。

合宿は圭介さんの妹だけじゃないし。

けど、馴れ馴れしすぎじゃなかったか?



「アイツ、優しそうだったな。ゆのの鞄を持ってたし」

「えっ?あっ…はい、そうですね。階段を下りようとしたら、荷物が邪魔して知らない人とぶつかったんです」

「……?」

「で、階段から落ちそうになったのを助けて貰って。危ないからと…持って貰いました」



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