家元の寵愛≪壱≫


「分かった。今夜、話し合おう」


そう、返事をすると


「あっ、ありがとう…ご…ざいます」


ゆのの頬に涙が溢れ出した。

俺は今すぐにでも彼女を抱きしめたい

衝動をグッと堪えて、離れを後にした。



朝食時に顔を合わせても、お互い無言のまま。


母さんが口を挟んで来たが、

お互いに上手く誤魔化した。




そして――――――、


1日の仕事を終え、自宅へ戻り

今朝と同じく無言で夕食。


夏場は夕食後の反省茶は殆ど無く、

俺はゆのの後を追うように離れへ。


部屋に入ったはいいが、やはり無言。


俺は……。


「先に風呂に入って来い」

「隼斗さんがお先に」

「髪を乾かすのに時間が掛かるだろ?」

「……はい。では、お先に…」


ゆのは浴室へと。


俺は気を落ち着かせる為、座禅を組む。

目を閉じ、心を無にして…。


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