家元の寵愛≪壱≫
私が放心状態の間に、
隼斗さんは素早く和服を脱ぎ捨て、
カジュアルな部屋着に着替えている。
「ゆの」
「へ?」
「せっかく起きたのに俺にまた寝ろって?」
「えっ?」
隼斗さんがベッドを指差した。
はっ!?
ち、ちっ、違う!!
そんなんじゃ……!!
私は慌ててベッドから離れた。
すると――――、
「何だ、ざ~~~んねん!!」
妖艶な笑みを浮かべ、
着物を衣紋掛けに掛けている。
「わ、私がやります」
「いいよ、もう終わるから」
隼斗さんは手際よく片付けて…
「ほら、行くぞ?」
「はい」
そっと差し出された手をギュッと掴んで…。
私達は朝食を取りに母屋へ向かった。