家元の寵愛≪壱≫
「ゆの、どっちがいい?」
指差した先には…
『MINI』と『FIAT』と書かれたカタログ。
どちらの車種も今の車とは全然違うタイプ。
「買い替えるんですか?」
「ん?……いや、俺のじゃない」
「へ?」
「ゆのの車」
「はい?!」
「買ってやる」
えっ?!
まさか、このカタログの車を?!
「ちょちょっ…ちょっと待って下さい!!」
「ん?……何で?」
「くくくく、くっ、車は…」
「免許を取っただろ?」
にこやかに微笑む隼斗さん。
「えっと……その……」
「欲しくないのか?」
「えぇ~~~っと……」
ヤバい!!
そう言えば、隼斗さんに言うのを忘れてる。
………どうしよう。
けれど、私に訊くって事はまだ買ってないって事だし
買う前で良かったと思えば……。