運命の果ての恋〜歴史は変わらない〜



「わっ…ぅおっ…ッ!!!」

人の肩に押され歩きにくそうに歩く美夜。


先ほどから、わざとそうしているかのように人の行く真反対の方向に進んでいる。

『こっちの方がえいろー』


と、言われたのは数分前。

まさしく重太郎の言うとうり、人は美夜達が向かいたい方向に向いて歩いているが。

なんだか、負けた気がした。


変な意地をはって重太郎と同じ所を歩かなかった。

(お腹ん中赤子ばはいっとんのえい加減自覚せぃ…)


重太郎は歩きやすい方で歩きながら、ため息をつく。

言ってやろうと思ったが、あえて言わなかった。


こうなっているのは自業自得。

煩い人の会話や歩く弾みで砂が軋む音の中。


「阿呆」

そんな重太郎の小さい呟きが。


煩い音に掻き消されたのか、美夜の耳に届いたのか。

重太郎には、確かめるすべはなかった。



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