運命の果ての恋〜歴史は変わらない〜
「「うわ」」
二人の声が、重なる。
美夜を抱き留めたのは、土方だったのだ。
いつぞやの件があって以来、お互い顔を合わせていなかった。
土方にとっては、近藤が熱くなってまで助けた美夜の存在が不思議でたまらない。
美夜にとっては、ただなんか目つきと口とか態度が悪いむかつく警察。
お互いの存在は、そんなかんじだった。
「お前は…お龍じゃねェか」
上から見下げられ、美夜も気分が悪くなる。
まだ肩に触れられている手を払いのけ、悪態をつく。
「うっせ。喋んな、つか触んな」
そんな態度にカチンときつつも理性で無理矢理怒りを押さえ付ける。
「…丁度てめぇには話があったんだ、来い」
眉間には深い深いシワを刻んで、無造作に美夜の着物の裾を引っ張る。
それによろけつつ、逆らうが力では到底及ぶわけがなくて。
「汚れるッ!!ギャァァ!!襲われるよぉッ!!」
だなんて人込みの前で大声をあげる美夜。
「…馬鹿ッ!!」
慌てて土方の大きい手が口元に覆われ、大声は塞がれる。
そして、店と店の間に連れていかれる。
「…??」
数メートル先で、重太郎が美夜の声を聞いたと思って振り返るが。
人込みの中。
美夜を見つける事はできなかった。