運命の果ての恋〜歴史は変わらない〜
沖田さん
「てめぇ…いい加減にしろよ」
怒りに満ちた土方の口元からは、ギラリと犬歯が覗いている。
「何の事でしょうか??お兄さんだぁれ??」
宝石を埋めたような目をして、土方に白々しく言う。
それに呆れて半歩下がる土方。
(今だッ!!)
と思って土を踏み締めて走ろうとするが。
「待て」
の一言と、捕まれた腕のせいで動きは制止してしまう。
それに観念する美夜だが、まだ警戒と逃げるチャンスを伺う態度はやめない。
「で…何??協力の件は断ったし…また斬るのかしら??」
頭一つ分以上の身長差がある美夜だが、精一杯見下した。
「違ェ…お前斬ったら近藤さんに何言われるか分かったモンじゃねぇよ」
そういう土方に、美夜はフンと鼻をならす。
「…お前は近藤さんとどういう仲なんだ??」
そっぽむいて居たけれど、心臓がドキリと鳴って思わず土方を見てしまう。
土方も美夜をまっすぐ向いていて、また驚いてしまう。
ただの通勤先の常連さんといえばそうなのだが。
一度、告白されて襲われかけた。
決して何も関係を持っていないが。
自然に俯いてしまい、視界に移るのは砂利と土ばかり。
ゆっくり、口を開いた。
「…ただのお客さんとして知り合っただけよ」
と言ってもどうも腑に落ちない様子。
二人には、言葉が混じらず。
人々から発っせられる雑音だけが。
耳に届いていた。