運命の果ての恋〜歴史は変わらない〜
「おーい!!」
まだ顔の表情が読み取れない距離だが眉間にシワをよせているのは間違いナシだろう。
いっつも、そうだから。
もうけっこう見えるぐらいなのだから声を上げて手をふっても返事がない。
気づいていないのか。
もっと激しく手を振って、さらに声を張るが。
周りの人はチラチラと見るが美夜は気にせず声を張る。
「重太郎〜??」
名前をいくら呼んでも返事は来ない。
もういいや、と思って気分がよくなって笑顔で小走りしながら近寄る。
「も〜、どうして何も反応ないのよ、重太ろ…」
笑いながら歩み寄り、顔、というより表情を見てみると。
(違う人じゃんんんんん!!!!!!!!)
そう、重太郎ではない全く別人に手を振って、あろうことか笑顔で歩み寄ったのだ。
向こうからしたら謎の女が物凄く手を振りながら、笑顔で近づいて来た事になる。
知らない人はポカン、とし。
美夜は恥ずかしさで顔をさらに赤くさせていた。
(ぅお゙お゙ぉぉおお!!!メッチャ恥ずいンですケド!!何コレ!?何コレ!?誰ですか!?何て言えばいいの!?しかもちょっと似てるし!!)
と、頭をかかえはしないものの、猛烈に頭をフル回転させてこの気まずい空気をなんとかしようとしたが。
重太郎の目をつぶらにした感じの知らない人の顔を見たら、笑いしか込み上げなかった。
「…人違いを…」
と言って切り出すも、笑顔は引き攣っている。
もちろん、知らない人も妙な相槌しか打てず、苦笑いしかできない。
言葉には出さないが、知らない人は今にも「ですよね」と言いそうな雰囲気に、美夜はさらに恥ずかしくなる。
穴があったら入りたい、という意味を身をもって知る事となった美夜であった。