運命の果ての恋〜歴史は変わらない〜
「労咳です」
"労咳"
いわゆる、結核の事。
空気感染が多く肺などの呼吸器官においての発症が目立つが、中枢神経(髄膜炎)、リンパ組織、血流(粟粒結核)、泌尿生殖器、骨、関節などにも感染し、発症する器官も全身に及ぶ。結核菌は様々な器官において細胞内寄生を行い、免疫システムはこれを宿主細胞もろともに攻撃するため、広範に組織が破壊され、放置すれば重篤な症状を起こして高い頻度で死に至る。
美夜の時代なら簡単に治せる病気。
しかしまだまだ医療は発達しておらず。
龍馬の仲間も何人か患わって死に至ったのだ。
それに、沖田は感染していた。
「ありがとうございます、すいません」
深く、深く先生にお辞儀をする。
そして先生から声がかかってから顔をあげる。
自分は、聞いて何をしたかったのか。
慰め??
看病??
哀れむ??
励まし??
それとも、助けたかったのか??
医者でもなく、医療の少しもかじっていない、自分が??
『先生達は治るって言っているから頑張って治そうね』
とでも言いたかった??
沖田も、大人だ。
自分は自分が分かっているのに。
解りきった未来から目を逸らして励ませと??
すべて先生からの言葉を鵜呑みにして、淡い期待を抱かせる??
何が正しいのか。
自分自身に、歯がゆさを感じた。
しばらく歩くと重太郎の姿が見えた。
ちゃんと、笑顔が作れているか頭で確認して。
ゆっくり口を開いた
「ごめんね…ちょっと待たせちゃって」
異常でもあるのか??と聞かれたから。
ゆっくり、首を左右に振る。
無理矢理の笑顔のせいで視界が狭まる。
嗚呼、幸せとは何でしょうか。
喜びでしょうか。
笑顔でしょうか。
裕福でしょうか。
満腹でしょうか。
快感でしょうか。
全てを合わせて幸せでしょうか。
胸に何を抱いてこそ幸せでしょうか。
扉を開くと。
人々のいろんな表情や感情と共に。
蒸し暑さが一気に美夜に襲い掛かった。
そこで、作った笑顔が消えた。