運命の果ての恋〜歴史は変わらない〜
姉と新婚旅行
美夜が眠って日が登ったのは何度めだろうか。
仕方がない、美夜にとっても大きな事がありすぎたのだから。
龍馬は、眉にシワを寄せて唸る美夜の頬を撫でるが。
いっこうにシワは和らがない。
自分のせいだ、と自分自身を攻める事しか出来ないでいると。
静かに、襖を開ける人物。
それは、重太郎だった。
同盟が成立するまではしばらく薩摩の方に居たのだ。
だから、護衛を頼まれた時いち早く動いたのは重太郎だったが、材木屋に重太郎がついた頃にはもう美夜は気を失っていた。
おにぎりを、両手に持っていた。
そして重太郎の方は向かず美夜の頬を撫で続け背を向ける龍馬に、おにぎりをなげつける。
龍馬は片手で、そのおにぎりを受け取る。
顔を動かさずに。
そんな龍馬に、重太郎は長いため息をついて。
「…自分だけ攻めんな、龍馬」
「おまんもなァ」
お互い、責任を重々感じていたのだ。
沖田に回り込まれた事にもっと早く気づいていたら。
もっと早く二人に護衛に行けていたら。
後悔先に立たず、なんてことわざがあるが。
二人共、そんなの分かっている。
分かっているけれど。
誰が悪い、落ち度がある、など攻めれない。
かといって自分は医療もわからない。
何もできない歯がゆさに、さらに自分にいらいらとした感情が募ってゆく。
ドタドタと暴れるようにして入ってくる男が、居た。
「龍馬君、重太郎君!!新撰組と一戦あったって本当かい!?」
重かった場の空気にはまったくもって不釣り合いな声にトーンに態度。
急いで来たのかは分からないが、髪はピョンピョンと跳ねていて。
ブラウンの瞳があっちこっちに動いて懸命に美夜を探す。
「海舟さん…」
龍馬が、ゆっくり振り返って驚いたのは海舟と重太郎。
龍馬の目には限界をとうに越して充血した瞳には涙がたまっていて、堪えようと歪んでいた。
「龍馬君…」
海舟の顔も、自然と真剣になる。
「こんまま美夜ちゃんが目ェば覚まさんかったら…どがぁ…こつ…したら…えぇんかッ!!分からんのですち!!!!」
龍馬の言葉と涙は共に溢れる。
喉が締められたように痛かったけれど、懸命に、懸命に声を出した。
そうしないと、どうにかなりそうだったから。
「海舟さん…ッ!!!!!」
海舟も、龍馬につられて涙ぐんだ。
そして、ゆっくりと美夜の隣に座る。
「美夜ちゃーん??…美夜ちゃん??」
海舟は、静かに名前を呼ぶ。
返事は無く、ただ規則的な寝息だけが聞こえるだけだった。
美夜の眉間のシワは刻まれたまま。
そして、海舟はゆっくり、大きく深呼吸をする。