運命の果ての恋〜歴史は変わらない〜
そして、龍馬と重太郎はまた桂と西郷で何か話があるらしく、海舟は大事な会合があるとかで慌ただしく帰ってしまった。
急に部屋は静かになり。
部屋には自分一人しか居なくて、ぽつりと座っていた。
美夜は、もう一つの『生きている』をさけんでいる自らの赤子がいるお腹を優しくさする。
よけいに、母性というモノが湧き出るのが自分でも分かった。
新撰組が、押し入って来た事件の事を、今も鮮明に思い出される。
沖田と土方。
どうして、沖田が??
様々な疑問が浮かんでくる中で、どっしりと美夜の心に居座っている感情があった。
それは、『不安』『恐怖』。
もちろん、その感情を抱くのが一般人だ。
美夜は、自らの身の心配をしているのではなく。
まだ小さいながらも懸命に生きる命を心配しているのだ。
赤子を身篭ったままでは、体も動きが鈍るかもしれなくて、我が子を守れないかもしれない。
もし、無事に生まれてきたとしても。
またいつ新撰組に襲われるかも分かっていない。
美夜に、ある一つの考えが浮かんだ。
それは、まだ美夜にとっては遠い未来の考えのため、今は考えるのを辞めた。
今は、我が子の名前を何にするか一人で考えていた。
いくつか、候補もあるし女の子でも男の子でもいいようにどちらも考えてある。
様々な候補の中、美夜が1番しっくりくるのは。
「男の子なら…直寛…女の子なら…翠」
そう、呟く。
いつになったら愛おしいこの子は自分の目の前に現れてくれるのだろうか。
きちんと、はじめましては言えるのだろうか。
外を見ながら、美夜は目を細くした。