運命の果ての恋〜歴史は変わらない〜
3月10日。
現在、美夜と龍馬と重太郎は薩摩藩に便乗して霧島温泉に居る。
長かった旅も終え、三人はしばしの休息をする。
「んふぁ〜長旅はつかれるでごわす〜」
美夜はそう言いながら、腕ん天に突き立て伸びをする。
大きくなってきたお腹に負担をかけないようゆっくり歩く。
「ちゅーても船やったろー」
船から、重太郎、龍馬の順番で降りてくる。
まぁ重太郎の言う事が正しいのだけれど。
いつもなら突っ掛かって行く美夜だが、温泉巡りという楽しいイベントが待ち遠しく、それどころではなかった。
龍馬、美夜、重太郎の順番に並ぶ。
それがいつもの三人で、やはりどこに行っても三人は一緒だった。
「えーと…龍馬ァ、何処を巡って行くんだっけ??」
温泉、というだけでウキウキしていたが、何処に行けばいいかすっかり忘れていた美夜は龍馬に問う。
しかし、龍馬もどうやら把握していなかったようだ。
無言のまま重太郎の方を向いた。
重太郎はまた、呆れたため息をつく。
「霧島温泉、日当山温泉、塩浸温泉やき」
そう言うと、龍馬と美夜はなるほど、と上機嫌で口を揃えて言った。
「それと、これは遊びじゃなか。あくまで龍馬の刀傷の治療のタメやっちゅー事を忘れんじゃなか」
はしゃぐ二人を一気に制止させる言葉。
重太郎はまるで二人の保護者のようだ。
美夜は、『ここまで来てそんなに堅くならなくていいのに』
そう、言いたかったが。
あえて言うのをやめた。
きっと、正論で押し返されてしまうだろうから。
「…まぁ」
静かになった二人に微笑む重太郎。
「少しは…楽しめ」
短い言葉だったが。
二人を満面の笑みにさせるのは十分の言葉。
「さっすが重太郎!!分かってるぅ!!」
「重太郎も楽しむとよかー!!」
二人はまた上機嫌になって重太郎の隣にひっつき歩く。
それが何だかこっ恥ずかしかったのか。
「少しだけ、言うたろー」
と言うと、鼻をフン、とならして先を歩く。
龍馬と美夜は暫く目を合わせた後。
ニヤリ、と笑って重太郎の後を追い掛けた。