運命の果ての恋〜歴史は変わらない〜



旅館につき、三人はひとまず落ち着いた。

全て西郷が手配をしてくれていたみたいで、待遇も厚く場所も最高だった。


全てに満足…否、一つだけ不満があった美夜はつい言葉を漏らした。

「…これで重太郎が居なかったら本当に新婚旅行みたいだったんだけどなァ…」


美夜はワザとらしく重太郎に聞こえるように、尚且つ嫌味を込めた目でじとりと睨む。

龍馬は今居なく、重太郎が壁に寄り掛かり立っていた。


重太郎はこの上なく美夜を見下ろした後、盛大にため息をついた。

「なぁ〜にが二人きりじゃ。どうせおまんらわしの事ば忘れて『龍馬〜愛してるわ』とか『わしもやき…』…っちゅーくだらんやり取りば始めるくせに…」


おそらく美夜と龍馬の台詞と思える所は重太郎が全力で棒読みで真似をする。

そこへちょうど現れた龍馬はどうやら重太郎の棒読み台詞を聞いていたみたいで、満面の笑みで、美夜の方へより肩を抱く。

「…??」


美夜も半ば龍馬の予測できない行動に慣れていたと思っていたが、やはり龍馬の行動は分からなかった。

そして少し顔を傾け重太郎に満面の笑みを見せる。

「重太郎〜違うちゃ!!」


一人笑う龍馬に重太郎も美夜も首を傾げるばかりで。


すると、龍馬はフッ、と真剣な瞳で美夜の方を向き直して視線を強く絡める。

急といえどもその瞳にやはり美夜は心臓がつい駆け足になってしまい頬を朱色に染め上げてしまう。

「美夜…わしはおまんを…命ばはってでも護りたい…っ!!…やき!!」

真剣な顔して歯の浮くような台詞を言っていたのに、急に笑顔で重太郎の方を向く。


どうやら龍馬は重太郎の棒読み台詞の訂正をしたらしい。

それに1番に気づいたのは重太郎でやはり長年共に一緒に居るからだろう。


「…はっ。」

くだらん事この上ないというように見下し、鼻をならした。


美夜もこの少し後に龍馬のしたかった事に気づく。

ただの芝居といえばそうなのだが、そんな芝居に一瞬でもときめいてしまった美夜は何だか自分が恥ずかしくなった。


相変わらず笑顔の龍馬に、美夜は一発殴っておいた。

痛いっ!!と悲鳴を上げ頭を抑える龍馬に、今度は美夜が鼻をならした。


そして、スッと美夜は立ち上がってしまい部屋を出る。

部屋を出る時、美夜は小声で「…馬鹿」とだけ呟いてさっさとどこかへ行ってしまった。


龍馬以外騒がしくもない部屋にはたとえ呟きでも聞こえてしまうもので、龍馬は頭を抑えながら固まってしまった。

「…ぇ、わし、どがぁしたかえ!?え!?重太郎!!」


まったく分かっていない龍馬に、重太郎はもはや苦笑いをするしかなかった。

そして呆れたように、ため息と同時に重太郎は言葉を零した。

「…ほんっまおまんは『おなごゴコロ』っちゅーモンが分かっとらん…そげんやき武智ば困らせるんじゃ」


「えぇ!?おなごゴコロ…??」

「…ほうか、おまん家みたいなはちきんあねやん四天王から『おなごゴコロ』なんぞ学べんのぅ。」


「んなっ、何をいっちゅうか分からんけんど、あねやん馬鹿にしな!!」

ぎゃあぎゃあと龍馬が一方的に騒いでいる時、美夜が顔を真っ赤にさせ廊下をせわしなく歩いてたのはまた別の話。



< 130 / 137 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop