運命の果ての恋〜歴史は変わらない〜
龍馬と美夜は出航時間を大幅にずらして乗船し、二人は重太郎に船の上でこっぴどく叱られた。
二人あわせて正座させられ、まるで子供のように口を尖らせて拗ねていた。
重太郎様々からの御説教が終わり、肩を下げて歩いていると。
一人の、薩摩藩士の人が、少し滅入り気味の二人に近づいた。
そして敬語なのだが、やはり薩摩独特の鈍り…というよりも、イントネーションで、話し掛ける。
「あの…千葉さんを、怒らないであげて下さい」
美夜は知ったように言ってくる薩摩藩士に、少しムッとして顔をしかめるが。
どうやら龍馬はムッとする気力も無いようだ。
今回の出航が大幅に遅れた元凶は、龍馬にあり、今まで武器を携帯していなく、危機感が薄い、とか。
そもそも先を見据えて行動しているのに、先を見すぎて下の石ころにすら気づいていない、とか。
思った事思った事ばっかりやってしまう龍馬にもまた重太郎は叱り。
散々叱られたせいなのは、言うまでもなく。
「あの…仲間の一人が、もうこれ以上待てないと言った時…千葉さんは必死にその仲間を引き止めたんです…だから、」
それ以上先の言葉が見つけだせなかったのか、その薩摩藩士は声をこもらせてしまった。
「…知ってるわよ」
重太郎に怒られたせいで、美夜はそっけない態度をしているわけではない。
重太郎が陰で凄く二人を支えているのは知っている。
それを、改めて指摘されたのが、美夜は悔しいという感情に似た者を抱いていた。
分かっているのに、そういう態度に見えていたのか、と自分自身にため息をつきたくなる。
「そう、ですか…よかったです」
藩士は、少し細長かった目をさらに細くさせ、笑ってどこかへ行った。
藩士の姿が消えてから、目の据わった龍馬がぽつりと呟いた。
「美夜ちゃんはわし以外には冷たいのぅ…」
「何良いように考えてんのよ…普通に私誰にでも優しいけど??ていうか、龍馬が無理矢理拳銃のお店に連れていくから…!!」
これ以上放っておくとヒートアップしそうな美夜に、龍馬は両耳を掌でふさぎ込む。
「あ゙ーあ゙ー!!!もう説教はこりごりにゃー!!!」
本当に嫌がっている龍馬に美夜は呆れながら手を腰にあてがいため息をついた。
「ほりゃ、美夜ちゃん…これ。」
お互い少し落ち着きを取り戻し、龍馬は懐から取り出した物を美夜の手をとり握らせる。
やけにずっしりとした重さが伝わり、美夜は持たされたものを見てみると、先ほど龍馬が買っていた拳銃だった。
「え、何で…??」
「『護身用』の銃やき!!いざという時ばコイツが火を噴くちゃ!!それと…わしとお揃い、やき…な♪」
龍馬も拳銃を取り出して身構え、美夜にウインクする。
「お揃いって言ったって…ペアリングとかじゃないんだから…」
美夜は呆れながらも、そう言ったら。
「ぺありんぐ…??未来ではどーゆー意味がか??」
「あー、何でもないよー」
ペアリングを説明しろ、と言われても一から説明するのがめんどくさくなって美夜は踵を返した。
一応少し先に三人共有の自室があり、美夜はそこに向かった。
(お揃い…ね)
美夜は自分が笑みを零してしまっているのには気づかず、懐に忍ばせている拳銃に掌を着物ごしにあてがい、幸せそうに微笑んだ。