運命の果ての恋〜歴史は変わらない〜
重太郎は、船内をぶらぶらと歩き回っていた。
薩摩を出発して、かなりの日にちがたっていた。
そろそろ、龍馬の故郷、土佐につくころだろうか。
つい最近、龍馬の脱藩の罪が免除されたとか聞いたような気がした、と重太郎は思い出した。
龍馬と美夜が龍馬のお姉さんに会いに行こう、と約束したのは結構前の話。
龍馬は果たせない約束をするのが嫌いだ。
きっと、龍馬自身はその約束を果たせないのかもしれない、と心が痛んでいたに違いないのだが。
結局龍馬は交わした約束をきちんと果たすのだ。
やはり変わっていない。
いつまでも同じ情熱と信念を持ち合わせている龍馬。
これで胸を張って龍馬のお姉さんに会えるな、と一人重太郎が微笑んでいたら。
美夜と龍馬の部屋の前に、一人の男が扉の前で立ち尽くしていた。
事情を聞くと中で親密にしているので入りにくい…これは入ってもいい雰囲気なのかわからない、とその男は重太郎に告げた。
伝える内容を男から聞き、重太郎はまた口が緩みそうになるのを必死におさえる。
そして、部屋の扉を開け。
それでも美夜に夢中で、重太郎が部屋の中に入ったのに気づかない龍馬の頭を軽く叩く。
痛い、と大袈裟に言う龍馬の声を遮って、重太郎は口を開く。
「よかったのぅ、無事に桂浜についたそうじゃ」
重太郎のその言葉に1番早く反応したのは龍馬で、目を輝かせながら勢いよく立ち上がり、重太郎の両手を自らの両手で包んだ。
「ほんまがか!!??」
すぐに重太郎は龍馬の手を振りほどいた。
美夜は二人の雰囲気的に、龍馬の故郷、土佐についたのか、と悟った。
まるで子供の頃に戻った様に、龍馬は部屋を出て行った。
二人はあまりの早い出来事にフリーズしていると、龍馬は扉からひょこりと姿を現し。
「重太郎、美夜ちゃん、早う早う!!」
ニコニコとそう言うと、また龍馬は見えなくなった。
美夜はもう龍馬の姿が見えないにも関わらず大きく頷いた。
重たいお腹を支える様に立ち上がって、美夜なりのハイスピードで歩く。
重太郎はそんな美夜を支える様に、美夜について行った。