運命の果ての恋〜歴史は変わらない〜
寝ぼけまなこでいそいそと支度する龍馬。


重太郎は、違う部屋の人達に何か指令を出しに行っているのか、居ない。


美夜は荷物もないためぼぅとしていた。


ずっと黙っているのも美夜はきにくわなかったから、龍馬に話しかけた。


「どこ行くの??」


龍馬の頭はまだ眠っているのか、返事が遅かった。


「…ん…勝海舟ちゅう人んとこば行くき」


急に出てきた幕末の活躍なさった方の名前。


龍馬に並ぶくらい有名。


美夜はいきなりのビックネームに少し驚いていた。


「どうして??」


今は結構早い時間帯。


こんな朝早くに来訪は、珍しい。


この時代では普通かもしれないが。


「斬るんじゃあ。奴を」


いつから居たのか、


いつから聞いていたのか。


重太郎が立ちながら壁にもたれかかっていた。


この時代に、自分を通そうとしたら、切り捨てでも通さなければならない。


途端、美夜の背中に嫌なモノがはしった。


美夜は、自然と言葉を漏らしていた。


「どうして…??どうしても斬らなきゃいけない…??」


美夜の声はか細く消え入りそうだった。


だが、龍馬と重太郎の耳にはきちんと届いた。


美夜は自分でも自分の言っている事に驚いていた。


今まで他人の命など、どうでもいいと考えていたのに。


龍馬と一日。


いや、数時間話しただけで、


美夜の心と考えは大きく変わっていた。


「人殺しばなってでも、我ァ通すんがわしらやき…」


重太郎がゆっくりと口を開く。


もうどうしていいか分からない美夜は、視線を慌てて重太郎に向ける。


そして龍馬も完全に目が覚めたのか、目がきちんと開いていた。


が、


いつもみたいに笑っていなくて。


龍馬も、ゆっくりと口を開く。


そして優しい声をだす。


まるで、子供言い聞かせる様な優しく甘い声で。


「美夜ちゃんには辛いかもしれんき…けんど、戦場で情けばかけるんやったらこっちがやられてしまうちゃ。ここは、そういう時代がぞね」


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