運命の果ての恋〜歴史は変わらない〜
龍馬はすっごい優しくて悲しそうな顔をしていた。


美夜は、見なくても分かった。


だから、見なかった。


美夜はただ、黙っていた。


静かな空気を割るように龍馬が立ち上がる。


重太郎は向こうへ姿を消した。


なんとなく美夜は龍馬の顔を見たくなかったから、下を向いていた。


だけど。


龍馬の手が美夜の目の前にスッと出され、


「ん。」


と短く言った。


多分、立てって事。


美夜は龍馬の大きな手を握って、立ち上がった。


龍馬の顔を、見ざるをえなかった。


やっぱり、龍馬は。


優しい顔をしていた。


悲しさを含んで。


途端、美夜の心臓がじわりとした。
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