運命の果ての恋〜歴史は変わらない〜
勝海舟という人のもとへ向かう道。


歩くたび、勝海舟の命の危機が迫っている。


刻一刻と時が刻みたびに、美夜の手にはじとりと汗が滲む。


じゃり、じゃり、と砂を踏む音だけが響く。


美夜の時代のように、アスファルトの地面などなかった。


何も出来ない美夜はただ砂利の道を踏み締める事しか出来なかった。


会話があるわけでもなく、砂の軋む音だけが響く。


どれくらい、歩いたろうか。


ある旅館が見えた。


その旅館が見えた途端、周りの者は刀に手を宛がうから、美夜はここに海舟が居るのが分かった。


「ついたき」


重太郎の低い声がこの場にいる十数人に聞こえる。


龍馬は、くるりと美夜の方に振り返り美夜の両肩に両手をのせる。


「ここでちっくと待ちとおせ…あ、おまん!!」


龍馬は優しく美夜に言った後、隣に居た男を呼び掛ける。


「何ですか、龍馬さん」


「美夜ちゃんを怪我ばさせんように、ちっくとここで見守ってくれんがか??」


「…はい」


男は、一瞬躊躇った後、龍馬の願いを承諾した。


「わしが目印の器ば持っていくき、それが割れる音ばしゆうならおまんら一斉に駆け付けぇ」


重太郎は、もう一度作戦を確認するように仲間達に説明をしている。


美夜は、後ろに居た龍馬達の方をくるりと振り向き、


「龍馬…重太郎…帰って来るよね??」


そう聞いた。


それを聞いた龍馬はニコォと笑い頭を優しく撫でて、


「いっちきち、へんしももっちきち。」
(行って、すぐに戻って来るよ)


と美夜を通り過ぎた。


それに比べ重太郎は、ただくすりと口元を緩ませるだけで。


頭をぺしっと叩いて、


「わしが死んだらおまんの夢枕ばたっちゃるき」


「あだぁ!!!???」


叩かれて思わず変な声が出る美夜。


そんな美夜の反応にまた口元を緩ませる重太郎。


その数歩先、お気楽に歩く龍馬に重太郎は足早に追いついた。
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