運命の果ての恋〜歴史は変わらない〜
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龍馬と重太郎だけが旅館に姿を消して数分弱。


ただ、私達は立って待っていた。


静かに。耳を澄ませ。


割れる音、龍馬か重太郎の雄叫びが聞こえようものなら、すぐに駆け付けるため。


まぁ私は駆け付けないが。


ただ、心の中で強く願っていた。


無事、二人が帰ってきますように。


龍馬、重太郎さえ助かればと考えている私は、まだ自分は成長なんてしていない。


もしかしたら…


もう、龍馬と重太郎は…


嘘。


嘘だよね…。


大丈夫、龍馬は戻ってきてあの笑顔を見せてくれる。


重太郎は戻ってきてたわいもない口喧嘩ができる。


二人を待てるなら、足は痛くない。


二人を待てるなら、沈黙も辛くない。


二人を待てるなら、寂しくもない。




二人が戻って来たならば。


おそらく一人の偉人の命は、果てているはず。


だけど私は喜ぶだろう。


まだ私は、成長などしていないから。


ただ一人でも多く助かればいい。


所詮この時代に生きるならば、これはわがまま。


今までそのわがままを軽蔑していたのに。


こんなにも、人は変われる。


変わっただけ。


成長は…


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