運命の果ての恋〜歴史は変わらない〜
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バタン、と襖が暴れるように開いたかと思うと、二人の男が、部屋に乱暴に入る。


龍馬と、重太郎だ。


呑気にもこの部屋に居る勝海舟という男は、茶をすすっていた所で、いきなりの出来事に茶を勢いよく噴く。


「ブフォッ!!!!????」


海舟の身につけた着物は台なしになってしまう。


それに構わず重太郎は刀を鞘から抜き取り、海舟の喉元に刃の切っ先を突き付ける。


「おまん、勝海舟であっちゅうがか??」


重太郎は威嚇をし、低いトーンで声だけで殺す雰囲気を醸し出す。


そんな雰囲気にも関わらず、海舟はへらりと刃の切っ先を無視して、重太郎の方を向く。


「おまえらは…」


ギン、と気楽そうだった目は鬼の形相に変わり、殺気を一気に重太郎に、海舟はぶつけた。


その瞬間、重太郎も気づかぬ内に、刀の力を弱めたみたいでその隙をつき海舟は刀の峰を掴んだ。


それを見て襖の前に立って見ていた龍馬も刀は抜かずとも手は宛がう。


「わしの…大切な着流しが台なしだろうがぁ!!!」


海舟一人が怒りをあらわにしているけれど、龍馬と重太郎は、ぽかんと口を開いたまんま。


一瞬でも海舟の殺気にすごんだ重太郎は、恥ずかしくなってくる。


そして、黒い笑みをにたぁと浮かべ、重太郎は、


「最後の言葉はそれでえいかえ??今生と別れの挨拶ばせんでいいがか??」


さっきよりも強く切っ先を海舟の喉元に宛がったため、つるりと鮮血の血が滑るように海舟の首筋をつたう。


「…と、今回はそんな事言ってられなかったな、龍馬君、重太郎君」


ついさっきまで青筋立てて怒っていた男は急に笑顔になる。


それも、とても優しさと愛情が篭った笑顔だった。


それよりも、二人が驚いたのは、二人の名前がわれていた事だった。


別段、二人は自ら名乗ったワケではないのに。


海舟という存在に、改めて身の危険を感じた二人だが、何もできなかった。
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