運命の果ての恋〜歴史は変わらない〜
「で、それから何時間もその話ば聞かされたき…」


はぁ、と重太郎はため息をつく。


龍馬と美夜はベタベタしたまま。


「それに龍馬が感服して…海舟さんの弟子ばなったき」


重太郎のその一言で、重太郎の話を聞いていた人達は、「えぇっ!!??」と大声を出してしまう。


「…ほたえな」


重太郎は静かにざわめきを止める。


「まぁ…わしらの旅館に戻るき…」


本当に悩ましげに重太郎は、歩みはじめた。


龍馬以外の全員、重太郎は龍馬に振り回されてかわいそうと思うのであった。


数分後、美夜達は最初の旅館に戻る。


すっかり日も落ちていて、辺りは月明かりに照らされるようになっており、やけに星達が輝いている。


美夜は、昨日と同じ龍馬といた部屋に向かう。


襖を開け、入ると美夜は床に吸い込まれるようにへろへろと座布団に座り込む。


「つ〜か〜れ〜たぁぁぁぁ」


だらしない声をあげていると、龍馬も入ってきて美夜の上に被さる。


「我が家がこじゃんといいき〜」


すると重太郎も入ってきて龍馬に鋭くつっこむ。


「いや、ここ旅館やき」


美夜と龍馬と違い、クールに壁にもたれかかる重太郎。


「いつのまに龍馬と武智はそげに仲良うなっちゅう??」


離れる事もせずベタベタする美夜と龍馬に呆れたように聞く。


「重太郎と違って龍馬は優しいからすぐに仲良くなったんです〜」


嫌味もこめて美夜が言うと、すこしカンに障ったのか重太郎は口を引き攣らせる。


「ほうかえ…ならわしの優しさを教えちゃる」


「やだね〜ばーか」


「アハハハハハ」


静かな部屋に響くのは、たわいもない口喧嘩をする声とそれを笑う声。


美夜が、望んだ光景。


重太郎とたわいもない口喧嘩して。


龍馬の眩しい笑顔を見たい。


血も流さずに解決した。


美夜はこの瞬間が幸せで仕方なかった。


この部屋には暫く賑やかな声が続いた。
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