運命の果ての恋〜歴史は変わらない〜
それから。


龍馬に、乙女さんの事を教えてもらった。


龍馬は、小さい頃お母さんを亡くしたらしい。


お父さんが仕事で忙しくて、相手できなかったらしい。


龍馬は五人兄弟の末っ子。


だから誰よりも姉、兄を慕う気持ちが大きい。


兄弟皆で助けあったらしい。


小さい頃の龍馬は、今の自分でも、泣き虫で甘えん坊だったらしい。


今でも私に甘えていいよって言ってやったら本気で耳まで赤くなっていた。


ずっと、龍馬の話を聞いていた。


小さい頃、兄、姉とここに行ったとか、


手紙で励まされたとか。


龍馬の話は面白くて、何時間も聴き入ってしまった。


龍馬に私の過去を聞かれたから、私も話す事にした。


東日本大震災が起きたのは、10才。


西日本大震災が起きたのは、15才。


そっから治安も政治も何もかも悪くなって、家族も壊れた事。


暗い話でもちゃんと聞いてくれる龍馬に、私は、話しやすかった。


佳の話も。


坂本が一緒だね、だなんて言って笑った。


佳と龍馬って何か雰囲気とか顔とか似てる気がする。


それから、ここの時代に来る前の経緯も話した。


暗い事も辛い事も楽しい事も全部、龍馬に話した。


途端、気分が軽くなった。


この日はもしかしたら大きく歴史を変えた日かもしれない。


未来から来た少女が、龍馬と恋に堕ちた。


深く刻まれた歴史をひっくり返す、恋。


本当はしてはいけないけれど。


私は、どんな見返りが来ようと関係ない。


私は、龍馬といれればいい…。


この時、私は気づかなかった。


私はすでに、刻まれていた。


歴史の歯車に次の世代へと向かうために、


私という小さくも大きいネジを


とっくに巻き込まれていた事に。


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