運命の果ての恋〜歴史は変わらない〜
「…ねぇねぇ」
ゆっくりと流れる時間の中。美夜が龍馬を呼び止める。
「どうしゆう??」
龍馬は振り返り、にこぉっと優しく微笑みかける。
そんな仕草だけで美夜は胸を焦がす。
「やっぱり…私も働いたほうが…」
自然に顔が俯いて。声は空気に溶け込みそうな程に小さくなる。
「なんちゃあないき。美夜ちゃんは心配せんでえいよ」
まるで龍馬は子供をあやすかのように、暖かい、優しい手の平で美夜の頭をなでる。
そんな返答は予想できた。
美夜は、また罪悪感が芽生える。
(どうせ、働かなくていいって答えを待っていただけじゃないの、私…)
恋をして、変われたと思った。
時代を超えて、変われたと思った。
結局…自分は変われていないという自分自身の嫌悪感に押し潰される。
「ありがとう…でも。このままじゃ、私駄目だ。」
美夜は、迷いのない瞳で龍馬を見つめる。
龍馬も、心の内は働いて欲しくなかった。
ここらで働けるトコといったら人で賑わうトコばかり。
そこで働けば当然美夜に悪い虫がつくし、もしかしたら自分以外に好意を寄せる輩ができてしまうかもしれない。
それだけは避けたかったが。
美夜の瞳に、おれた。
「…分かったき。」
そう、龍馬が呟くと美夜のさっきまで引き締められた瞳はどこへやら。
ほわん、と緩んでしまった。
「わかった。海舟さんの言う通りもう一つ名前をつくろうか♪」
「んー…そうするがか!!」
二人はまたいつもの笑顔を取り戻し、部屋の中へと入っていった。