運命の果ての恋〜歴史は変わらない〜
幕府の者
「はい、お団子ですね!!」
明るいオーラを纏い接客をするは、美夜(お龍)。
もうこの団子屋に就職して3ヶ月。そろそろ接客も板についてきた頃で。
すっかりちまたで評判の看板娘となってしまった。
味を求めて来る者や、美夜を求めて来る者などみなそれぞれ目的は違えど、繁盛していることには変わりない。
「うへへ、お龍ちゃん今日も別嬪だねィ」
そう言って平然とお龍にスキンシップをする下品な男。
美夜も内心嫌がるが、接客上表や声には出せない。
「あらま、お世辞が上手な旦那さんだね」
だなんてごまかす。
客のスキンシップよりも、困るのがこのあとだった。
いつもこういう時だけ龍馬に見られているのが不思議だ。
営業の邪魔まではしないが、帰ると必ず。
『今日…あげな男に体ばさわらせゆう…』
龍馬に会ってまず一言目がこれ。最近ほぼ毎日だった。
最近、祝言もあげ超新婚さんで超ラブラブ!!!…というワケでもなかった。
美夜はただの居候にならないために頑張って働いて、龍馬も、最近色々なゴタゴタの中祝言をあげた。
だけど。お互い愛が切れるわけではなかった。
龍馬は毎日のように目を光らし、暇さえあれば美夜とくっつく。
美夜もそんな龍馬が可愛くて、喋っているだけで楽しくて。
もっとも強いのは。
『あげな男にさわられゆう…わしが慰めちゃろー』
と言い、龍馬は美夜を夜の世界へと連れて行ってしまう。
余り昼間ではイチャイチャできないが、夜のお手並みは普通以上。
そして。店で働くようになってからの一日は早く、もう夕日は沈みかけている。
美夜の居た頃とは違い、使われなくなった高層ビルなどは無く、ただ綺麗に夕日を眺める事が出来た。
すっかり夕日に魅入ってしまい、慌てて美夜は帰宅の支度をする。
最近寝泊まりしている旅館の部屋の前に立ち、深呼吸する。
またいつものが始まるのか、と期待とだるさを含みため息をつくと。
「あ、お龍が帰ってきましたき」
私の出した些細な音で気づくのは重太郎以外居ない。
それに、この声は確かに重太郎だが重太郎は普段美夜、やお龍、とは呼ばず武智と呼んでいる。
そのことから美夜は誰か客人でも居るのか、と大体予想できた。
龍馬と一緒に居ての経験で分かる。
大体龍馬の客人は攘夷の運動をする者だ。美夜が客人と席を一緒にすると客人は機嫌を悪くする。
聞かれたくない話も多く、当たり前の事だ。
最初の内は龍馬にも何の話をしていたが聞いていたがはぐらかされるのがオチなため、聞かなくなっていた。
その経験から、美夜は完全に『お龍』になって、ゆっくりと口を開いた。
「龍馬様、また後で伺います。ごゆるりとお話ください。茶菓子でもだしましょうか??」
襖ごしに喋った。向こう側は何人いるか特定できずにいると、一つの明るい声がかかる。
「お龍ちゃん、入っていいよ!!」
この声は、海舟だった。いつもお世話になっているため忘れれるワケがないこの声。
若干この声に気持ちが和らぐ。しかし、客人は海舟だけではないようだ。
ゆっくりと部屋の中へ入る。