運命の果ての恋〜歴史は変わらない〜
また、あっという間に日没が迫る。
いつものようにのれんを降ろし、いつものように帰る。
別段美夜は時間や予定など変えておらず、また土方か沖田が来ると思っていたが姿を現さなかった。
内心、安心もあったがやっぱり言いたい事もあったから複雑な気持ちで歩く。
もうすぐ旅館につく頃に、声をかけられた。
「よぉ」
この声は、土方だと美夜は思い、振り返る。
美夜の予想は的中し、そこには土方の姿があった。
美夜は、冷たい目で土方を睨む。
「何ですか」
美夜は、なるべく声に威圧をかけるようにして、凜とした態度をとる。
「返事はどうする??俺達、幕府につくのか??」
美夜の態度にびくともせず、またニタニタと犬歯をギラつかせる。
「断るわ」
美夜は、短く言いきった。
美夜の瞳に迷いが無いと分かった瞬間、土方は刀に手を宛がう。
「…何するの」
美夜は、大方予想はできた。が、一応そうではない答えを望んで問いただす。
しかし土方は犬歯をまた覗かせて、一言だけ言った。
「斬る」
美夜の嫌な予感が的中する。
土方の犬歯はさらにギラつき、藍色の目は妖しく月明かりに反射する。
美夜の背中に嫌なモノが走る。
土方は刀を抜き、夜空に突き刺す様にして大きく振り上げる。
刀の鋭い切っ先が、眩しく月明かりに反射する。
美夜は、この先に期待を持たず堅く目をつむった。