運命の果ての恋〜歴史は変わらない〜
「何している!!!」
静かな夜に、野太い声が響く。
この声に、美夜は思い当たる人物が居た。
もしやとは思い堅くつむっていた目をゆっくりと開くと。
思わず、言葉をもらした。
「こ、近藤さん…??」
土方の振りかざされた刀は、行き場を失い、かざされたまま、静止する。
「貴女は団子屋の方じゃないですか!!!」
豪快にも暢気にも笑いながら、近藤は美夜に近づく。
近藤は美夜の働く団子屋の常連だった。
暇さえあれば来る人で、優しくて気さくな人だったから美夜と近藤はすぐに打ち解けた。
そんな近藤が、普段絶対に見せない表情で土方を睨みつける。
そして今までの近藤からは聞いた事のない低い声で、さらに土方を威圧した。
「…で。トシ。お前は何をしようとしてた??」
「いや、近藤さん…その…」
あの土方でさえ回答に困っている。一体、この人物は??美夜は考えただけで頭が痛くなった。
そうしていると、今まで何をしていたのか、沖田がひょっこりと姿を現した。
「このコは僕達の取り引きを断ったからネ」
沖田の飄々とした喋り方は変わってないが相当焦っているのが分かる。
「だからって女子供を殺すのか??」
近藤の強い目線は沖田にいく。
その瞬間、土方が安堵する。
「近藤さん、駄目ですヨ。一人に思いを入れては…」
沖田が、真剣な表情になる。
「…お前らよりも生きてきた。分かっているよ」
美夜は、ただ呆然と三人のやりとりを見ていると。
近藤は表情をガラッと変えて美夜にいつもの優しい笑顔をみせる。
「もう、迷惑かけない。さぁお帰り」
と言って美夜の背中を押す。
美夜は戸惑いながらもその場をあとにした。