運命の果ての恋〜歴史は変わらない〜
正体
急いでいつもの旅館に入ろうとすると。
「美夜ちゃーん!!!」
入口で待ち伏せしていたのか、龍馬が美夜の名前を言いながら抱き着く。
そして、美夜は帰ってきたんだ、と安堵し龍馬に素直に従う。
龍馬は美夜の頭をくしゃくしゃとなでる。
「心配しとったがじゃ、美夜ちゃんが遅いからのぅ…」
本当にか細いか細い声で、美夜の耳元に唇を宛がい抱きしめる手はさらに強くなっていく。
その優しさが、美夜をさらに安心させた。
そのせいか、美夜の足に力が入らなくなりがくん、と龍馬にもたれかかる。
「…どがぁした…!?」
龍馬は、美夜が倒れないように、強く抱きしめた。
美夜は、震える声を振り絞って、ゆっくり口を開いた。
「こ…怖かっ…たぁ…」
美夜の目には、うっすらと涙が滲んでおり、体を預ける美夜に龍馬は思わずドキリとする。
しかし、龍馬はそんな思いを頑張って消す。
そして、頭を優しく撫でる。
だんだん美夜は安心して、そのままの体制で今日あった出来事を話した。
土方からの誘いを断った事、
土方が怒って刀を振り上げ殺されかけた事、
常連客の近藤さんが助けてくれた事。
その日に起きた出来事が多過ぎて、美夜も実際まだ頭の整理が追いついていない。
だからそのまま、龍馬の好意に甘えて喋り続けた。