運命の果ての恋〜歴史は変わらない〜
もうお昼近いころか…
そのせいか、客は朝よりも一段と多くなり、比例して美夜も忙しくなる。
運ぶ団子を見てはお腹がすき、よだれがたれそうになるほど。
「お龍さん!!」
聞いたことのある、野太い声が美夜をもう一つの名で呼ぶ。
その声の招待は、謎につつまれたここの常連の近藤だった。
今までなら、ただの優しくて気さくな常連さんだったが。
昨日のあの土方を戸惑わせた件のせいで、近藤は謎の人物となった。
しかも『トシ』と、いかにも親しそうに土方を呼んでいた。
美夜は少し警戒しながらも、近藤のもとへいつもの様な態度で接する。
「あら、近藤さん!!今日は何にするんだい??」
いつもの営業スマイルも使って。
すると、近藤の薄い茶色の瞳が、悲しそうに揺らぐ。
刹那、美夜も不安になる。
近藤はゆっくりと口を開いた。
「無理して、笑わなくていいよ。先日の事があるだろうに…」
心を完全に見透かされたようで、胸は刺されたようにドキリとする。
「な、何の事だ「時間はある??」
美夜は、誤魔化そうとしたが近藤がまた見透かしたように言葉を遮った。
美夜としても、龍馬に話した事だったし忘れたかった。
「お昼休みに…」
と、貼付けた笑顔を一生懸命保って踵を返して立ち去った。
「わかった」
繁盛な店の中、人々の声で掻き消されそうな近藤の言葉を、背にあびて美夜は別の客のところへと行った。