運命の果ての恋〜歴史は変わらない〜



美夜が、堅く目をつむったその時。

空気を割るような、鼓膜が破れそうな爆音が響く。

それは、銃声だった。


高杉晋作から貰った拳銃。

美夜はその爆音で、意識を手放した。


近藤には当たらなかった。

反射的に後ろを勢いよく振り返ろうとすると。


二本の刀が、自らの首の前にあった。

まさに、いつでも近藤を殺せると言わんばかりの場所で刀は制止している。


その刀を持っているのは、龍馬と重太郎。

近藤の首の右と左から出ていて、前でクロスにされていた。


後頭部には、冷たい金属が当たっている。

前後左右共に逃げ道を塞がれ、近藤は嫌な汗が滲み出る。

「おまん…死ぬる覚悟ばできとるろー??」

「…龍馬!!!」


今にも刀を引いて拳銃をぶっ放しそうな状態に、重太郎は注意する。

本当に新撰組の親玉ならば、厄介な事しかないから。

「武智ば無事じゃ!!正気に戻れ!!!!」

そう言っても、龍馬の瞳は妖しく光り完全に瞳孔が開いている。


本気でキレた龍馬を見るのは、重太郎にとっては何年ぶりか。

「龍馬!!!!!!!!!!!」

重太郎が、強く怒鳴る。

「…ほたえな」

龍馬の拳銃と刀を持つ手が、弱々しく震える。

「分かっちゅう…分かっちゅう!!!!」

龍馬の瞳からは、普段決して見れない、光に強く反射する涙が溢れる。


それから、龍馬は何も言わずに刀を鞘に納めて拳銃も懐に入れなおした。

重太郎も苦虫を噛み潰したような表情で、刀をふる。

刀は空気を割くようにヒュンッと鳴った後、鞘にしまわれた。


龍馬は気絶した美夜を抱え上げ、強く強く抱きしめる。


「貴様(きさん)…もうコイツに寄るんじゃなか…そん時は…」

それ以上、重太郎は言葉を発さずに龍馬の後についていった。


呆然とした近藤が、ただ草原に座っていた。



−−−−−−−−
< 76 / 137 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop