運命の果ての恋〜歴史は変わらない〜
美夜が、堅く目をつむったその時。
空気を割るような、鼓膜が破れそうな爆音が響く。
それは、銃声だった。
高杉晋作から貰った拳銃。
美夜はその爆音で、意識を手放した。
近藤には当たらなかった。
反射的に後ろを勢いよく振り返ろうとすると。
二本の刀が、自らの首の前にあった。
まさに、いつでも近藤を殺せると言わんばかりの場所で刀は制止している。
その刀を持っているのは、龍馬と重太郎。
近藤の首の右と左から出ていて、前でクロスにされていた。
後頭部には、冷たい金属が当たっている。
前後左右共に逃げ道を塞がれ、近藤は嫌な汗が滲み出る。
「おまん…死ぬる覚悟ばできとるろー??」
「…龍馬!!!」
今にも刀を引いて拳銃をぶっ放しそうな状態に、重太郎は注意する。
本当に新撰組の親玉ならば、厄介な事しかないから。
「武智ば無事じゃ!!正気に戻れ!!!!」
そう言っても、龍馬の瞳は妖しく光り完全に瞳孔が開いている。
本気でキレた龍馬を見るのは、重太郎にとっては何年ぶりか。
「龍馬!!!!!!!!!!!」
重太郎が、強く怒鳴る。
「…ほたえな」
龍馬の拳銃と刀を持つ手が、弱々しく震える。
「分かっちゅう…分かっちゅう!!!!」
龍馬の瞳からは、普段決して見れない、光に強く反射する涙が溢れる。
それから、龍馬は何も言わずに刀を鞘に納めて拳銃も懐に入れなおした。
重太郎も苦虫を噛み潰したような表情で、刀をふる。
刀は空気を割くようにヒュンッと鳴った後、鞘にしまわれた。
龍馬は気絶した美夜を抱え上げ、強く強く抱きしめる。
「貴様(きさん)…もうコイツに寄るんじゃなか…そん時は…」
それ以上、重太郎は言葉を発さずに龍馬の後についていった。
呆然とした近藤が、ただ草原に座っていた。
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