運命の果ての恋〜歴史は変わらない〜
気がつくと。
龍馬は、血だらけになっていて、血だらけな重太郎が泣きながら龍馬を抱きしめていた。
血だらけなのは、傷のせいか。
否、血だらけなのは自らの血ではなく、全て龍馬にかかる血は返り血だった。
鮮血に染まる手が、血で濡れた刀を握っていた。
いつもは表情をあまり崩さない重太郎が泣いていた。
辺りはとっくに日が暮れていた。
「龍馬…!!!」
男達の姿など、なかった。
逃げたのか…
全て、龍馬が…
龍馬本人には確かめようのない事だったが。
回りには異常な肉片が飛び散り、人としての形を留まらずに肉の塊と化したモノがあった。
左目は返り血で潰れ、ろくに視界も定まらない。
「重太…郎」
思ったよりも声が出にくくて、掠れた声しか出なかった。
すると、重太郎は顔を上げてさらにわんわんと泣き出した。
龍馬は、自分が狂っているのかと思った。
こんな時なのに、重太郎がこんなにも心配して涙してくれる事が嬉しい、と思ったから。
それから加尾達の所へ戻った。
皆、二人を見るなり狂ったように怒ったり、心配したり、悲しんだりした。
そんな皆に、龍馬はまた口がつい緩んでしまった。