運命の果ての恋〜歴史は変わらない〜




気がつくと。

龍馬は、血だらけになっていて、血だらけな重太郎が泣きながら龍馬を抱きしめていた。

血だらけなのは、傷のせいか。

否、血だらけなのは自らの血ではなく、全て龍馬にかかる血は返り血だった。


鮮血に染まる手が、血で濡れた刀を握っていた。

いつもは表情をあまり崩さない重太郎が泣いていた。


辺りはとっくに日が暮れていた。

「龍馬…!!!」


男達の姿など、なかった。

逃げたのか…

全て、龍馬が…


龍馬本人には確かめようのない事だったが。

回りには異常な肉片が飛び散り、人としての形を留まらずに肉の塊と化したモノがあった。


左目は返り血で潰れ、ろくに視界も定まらない。


「重太…郎」

思ったよりも声が出にくくて、掠れた声しか出なかった。

すると、重太郎は顔を上げてさらにわんわんと泣き出した。


龍馬は、自分が狂っているのかと思った。

こんな時なのに、重太郎がこんなにも心配して涙してくれる事が嬉しい、と思ったから。


それから加尾達の所へ戻った。

皆、二人を見るなり狂ったように怒ったり、心配したり、悲しんだりした。


そんな皆に、龍馬はまた口がつい緩んでしまった。



< 80 / 137 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop