運命の果ての恋〜歴史は変わらない〜
重太郎は、あの丘に来ていた。
残暑がまだまだ厳しい時期でもここならば涼しいから。
何もない、ただ草原が広がっている場所。
風が、美夜の髪の毛を遊ぶようにして強く吹く。
ここに来たからといって、何かなるわけでもなかった。
ただ、二人は逃げるようにしてこの場所に来たのだ。
美夜は、ゆっくりと顔を離した。
泣き腫れた顔に、思わず重太郎は笑った。
「わ、笑うな!!馬鹿!!」
恥ずかしいのか、また顔を埋めるようにして隠す。
そんなかわいい仕種にも、重太郎の胸は苦しく締め付けられる。
思わず、「愛しちゅう」と言いそうになってしまう。
「ねぇ、重太郎…」
愛おしく、美夜を見つめていると、美夜が重太郎を呼ぶ。
重太郎は優しい口調で、「どがぁした」と聞く。
「キスして」
美夜はいつの間にか顔を上げていて、重太郎の目をみてそう言った。
いくら、勢いとはいえ…
「そげんこつ、龍馬と…」
続きを言おうとして、止めた。
それに気づいた美夜は苦笑いをした。
そしてまた、真剣な顔に戻って、口を開く。
「大丈夫」
重太郎も、腹をくくる気持ちで美夜の顎を掴む。
嬉しいような、複雑な気持ちが入り混じるが、そんな思いは掻き消した。
美夜も、目をゆっくりと閉じて両手を重太郎の背中に、回した。
そして、唇が近づく…