運命の果ての恋〜歴史は変わらない〜
チュ、とリップ音が響いたと思った少し後に、キスされた事に気づく。
触れるだけのキスをした加尾は、悪戯っぽく笑う。
「久しぶりですね、何もかも」
そう言う加尾の瞳はどこか怪しげに妖艶に光っていた。
普通の男なら、キスをされて(しかも向こうから)あんな瞳をされたら落ちない奴など居ないだろう。
しかし。
龍馬は、心ここにあらずという感じだった。
頭の中では、美夜の事でいっぱいだったから。
(どういて美夜ちゃんが…どういてどういてどういてどういてどういて)
と、いうような感じ。
キスされた事も、頭の隅に追いやられるほどに。
そんな龍馬に加尾が疑問を抱くのは当然の事で。龍馬の名前を呼ぶがまだ返事がない。
すると。
「すまん!!!加尾!!!!」
龍馬が突然、加尾に頭をさげた。
唐突な事すぎて加尾が言葉が出ないでいると、さらに龍馬は言葉を紡ぐ。
「わしは…もう美夜ちゃんと祝言ばあげたんじゃ!!!!!」
「!!」
加尾が、驚いて目を見張る。
「やき…まっことすまんと思っちゅう!!」
しばらく、沈黙が漂う。
加尾が、またクスリと笑った後、沈黙を破った。
「なら早く言ってくださいな。ほら、早くその美夜さんを追い掛けて下さいまし」
以外な反応に、龍馬は驚き顔を上げる。
「え…」
「ほら!!早く行って行って♪♪」
半ば加尾に背中を押されたように、龍馬は部屋を足早に出て行った。
龍馬が出て行った部屋。
加尾が一人、座っていた。
「相変わらず、ですね…龍馬様」
またクスリとわらう彼女の目には、今にも涙が溢れてしまいそうだった。