運命の果ての恋〜歴史は変わらない〜





お互いの息がかかる所まで、唇が近づいた。

「美夜…」


初めて、重太郎が美夜を下の名で呼んだ。

「愛しちゅう」と言おうとしたが、またこの言葉を飲み込んだ。

すると、遠くから。

「美夜ちゃーん!!!!!」


龍馬の、呼ぶ声が聞こえた。きっと幻聴とかではないだろう。

重太郎も、声の方向を向いたから。


「今更遅いよ…馬鹿」

そう言って、美夜はもう一度重太郎の方を向き直すと、重太郎の両頬を両手で包んだ。

美夜はまるで、何かから逃げるようにして重太郎に唇を近づける。


「美夜ちゃん!!!!」

龍馬の声が近くなったと思うと、すぐそばまで、息をきらした龍馬が立っていた。

だけど美夜は、龍馬を見た後すぐに重太郎に唇を近づける。


すると。


美夜の視界が一気に掻き回されたと同時に、妙な重力に襲われた。

「きゃぁッ!!!!」


何もない原っぱに、美夜の悲鳴が響いた。




< 92 / 137 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop