ある2人のある日常的なハロウィンの1日
ノブに手をかけて、リビングに入る。
「あ!ししょ……う?」
目を瞬かせて私を見る弟子は、私の頭からつま先まで眺めて、首を傾げた。
「いや、確かにベッドのところとは言いましたけど……」
自室のベッドに置かれた黒猫セットーーではなく、その下のベッドシーツにのぞき穴2つと口元の大きな穴を開けて、頭からすっぽりかぶった。古典的なオバケだ。
「なにか?」
「……いえ、予想外だったもので。取り敢えず、Trick or Treatって言ってください」
『お菓子かイタズラか』か。
「Trick or Treat 」
「はい、どうぞ」
言ってみると、弟子はにこにことリンゴを差し出してくる。
「……リンゴはお菓子か?」
「あまいもの、なら、なんでもいいんじゃないですか?」
いいのか。それで。
取り敢えず、リンゴを一口かじる。まぁ、あまい。
「……お前は言わないのか?」
「え?ああ……」
じっと私がリンゴをかじるのを見ていた弟子は、促されると嬉しそうに
「Trick or Treat!」
と言って笑う。
「……」
「……へ?」
たった今起こったことに、弟子は真っ赤になって唇に触れる。
「“あまいもの”か“イタズラ”か、なんだろう?」
「え、と……今のは?」
「あまいもの」
「……」
弟子は何か言いたげに口を開いては閉じてを繰り返していたが、やがて肩をすくめて
「食べましょうか」
テーブルを指差し、椅子に腰掛けた。
自分も椅子に腰掛け、コーヒーを一口すすった。
心なしかあまい気がするのは、気のせいだ。きっと。
-Happy Halloween-
「あ!ししょ……う?」
目を瞬かせて私を見る弟子は、私の頭からつま先まで眺めて、首を傾げた。
「いや、確かにベッドのところとは言いましたけど……」
自室のベッドに置かれた黒猫セットーーではなく、その下のベッドシーツにのぞき穴2つと口元の大きな穴を開けて、頭からすっぽりかぶった。古典的なオバケだ。
「なにか?」
「……いえ、予想外だったもので。取り敢えず、Trick or Treatって言ってください」
『お菓子かイタズラか』か。
「Trick or Treat 」
「はい、どうぞ」
言ってみると、弟子はにこにことリンゴを差し出してくる。
「……リンゴはお菓子か?」
「あまいもの、なら、なんでもいいんじゃないですか?」
いいのか。それで。
取り敢えず、リンゴを一口かじる。まぁ、あまい。
「……お前は言わないのか?」
「え?ああ……」
じっと私がリンゴをかじるのを見ていた弟子は、促されると嬉しそうに
「Trick or Treat!」
と言って笑う。
「……」
「……へ?」
たった今起こったことに、弟子は真っ赤になって唇に触れる。
「“あまいもの”か“イタズラ”か、なんだろう?」
「え、と……今のは?」
「あまいもの」
「……」
弟子は何か言いたげに口を開いては閉じてを繰り返していたが、やがて肩をすくめて
「食べましょうか」
テーブルを指差し、椅子に腰掛けた。
自分も椅子に腰掛け、コーヒーを一口すすった。
心なしかあまい気がするのは、気のせいだ。きっと。
-Happy Halloween-