ヴァルキュリア イン キッチンⅡeternal
「察しのよろしいあなたのことですから、私が今夜ここに来た理由……目処はついてると思いますが」


「まぁ、なんとなく……クッキングスクールの生徒に何かある……だろ?」



 一条が煙草の旨みを吸い上げ一気に吐き出すと、白煙が夜闇に混じって消えていく。



 羽村は言葉を選んでいるのか逡巡したあと、煙草の紫煙を燻らせながらつぶやくように言った。



「春日さんのお友達の神崎紗矢子ですが……彼女には注意が必要、かもしれません」



 歯切れの悪い言い方に一条は訝しげに眉を顰めた。



「かも、ってなんだよ?」



「以前から私の調べている調査で表向きは商社勤めのOL、陰では違法諜報員という女が目障りなほどにうろうろしてまして……」



「そんな諜報員いくらでもお前の周りにうろついてるだろ」



「はい、始めは私も気に止めていなかったのですが、神崎は自分の得のためなら何にでも手を染める女です……あまり詳しいことは話せませんが」

< 109 / 326 >

この作品をシェア

pagetop