ヴァルキュリア イン キッチンⅡeternal
 偶然にもそんな折、都心部への転勤が決まって恋人とも別れ、独りとなった紗矢子がまず一番に出向いた先が「noir」だった。

 精神的にも疲れきっていた紗矢子は思わず斎賀に人肌恋しいと胸の内を明かすと、あっさり枕はしないと断られた。


 それでも紗矢子は女として満たされたい何かを求めて斎賀に食い下がり、成り行きでそのまま身体の関係を持った。



 斎賀には妻子があった。


 けれど、紗矢子は別に斎賀を自分のものにしたいとも、妻と別れて欲しいとも考えたことはなかった。


 割り切った関係―――。


 お互いにその気になった時だけ寝る関係が、後腐れなくて今の紗矢子には都合が良かった。

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