ヴｧﾙｷｭﾘｱ ｲﾝ ｷｯﾁﾝⅡeternal

「私ね、とっても大切な友達がいるの」


「へぇ、初耳だな」



　不意に紗矢子の口調が穏やかなものになり、斎賀は思わず紗矢子に目を向けた。


「そうなの、中学生の頃からずっとずっと一緒でね……何も着飾らない素の感じが新鮮で、可愛い子なの」

　紗矢子の口から心底他人を褒める言葉が出てくるなんて珍しいこともあるものだと、斎賀はとりわけ気にすることもなく話に耳を傾けていた。



　紗矢子は最後の紫煙を吐き出すと、灰皿に火種を押し付けて髪の毛をかきあげた。




「大親友なの……それまで私は何もかも完璧で、私に足りないものなんて何一つないと自分で思い込んでたわ、成績だって常に学年一位、ファッション雑誌モデルもやった、男なんていつも私の周りに嫌ってほどいた」



「そのご友人とやらは、お前とは全く正反対なんだな……」



「そうよ……」



　紗矢子がグラスに手を添えて、中のカクテルを凝視する。