ヴァルキュリア イン キッチンⅡeternal
「私にないものをたくさん持っているって気がついた時、自分でも理解できないような感情におかしくなりそうだったわ……親友だったからこそ、私より優れているなんて許せなかった、ふふ……こんな性根の曲がった女は最悪でしょ」




 自嘲するように紗矢子は苦笑いを浮かべてグラスを煽った。



 斎賀はなんとなく紗矢子が嫉妬心の強い女であることはわかっていた。


 口では強がっているが、本当は繊細な心の持ち主であることも。


 けれど、斎賀は自分の立場を省みると、紗矢子に手を伸ばしたくてもそのような資格があるのか躊躇っていた。


「紗矢子……」



「もう帰るわ、明日も早いの」



 紗矢子がコートを羽織ながら言うと、斎賀は足早に店から出て行く紗矢子の後ろ姿だけを見送っていた。
< 148 / 326 >

この作品をシェア

pagetop