ヴァルキュリア イン キッチンⅡeternal
 奈央はその名前に頬を緩ませ、その場で折り返し電話をかけた。



『もしもし、奈央?』



「紗矢子? 電話くれた? ごめん、仕事中で気づかなかった」



『いーのいーの! そうだと思ったよ。私さ、今どこにいると思う?』




 神崎紗矢子は奈央と中・高の同級生で、卒業と同時に進路が別になってしまったが、学生時代の中では唯一仲の良かった親友だ。



「え? どこって……」



『実は転勤してこっちに来てるんだ。折を見てあんたに電話しようって思ってたんだけど今夜暇?』



 思いついたら即実行のこの性格も相変わらずのようだ。



 奈央はそう思うと思わず吹き出してしまった。




「うん、時間あるよ、ちょうど今仕事終わったところなの」



『ほんと? じゃあ駅で待ってるから、積もり話はまた後で』



 慌ただしく通話を切られ、奈央は何年経っても変わらない親友に安堵のため息を漏らした。


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