ヴァルキュリア イン キッチンⅡeternal
「司、なんだこんなところにいたのか」


 仕事を終え、自室に戻る途中で不意に声をかけられて一条は後ろを振り返った。



「ああ、兄貴か」



「今、お前の携帯に電話入れたところだったんだけど、繋がらなかったからまだ仕事中かと思ったよ」



 ローザンホテルの総支配人である一条の兄は、人あたりの良さそうな気さくな男だったが、仕事に関しては兄弟揃ってストイックなところもあった。



「とうとう明日、クリスマスのコンテストだな、お前の彼女はどうだ? 一緒に頑張ってるんだろ?」



「え? あ、ああ」



 一緒に頑張ってはいるが、胸につかえた蟠りをなんと説明していいかわからず、一条はとりあえず曖昧な返事をしてしまった。
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