ヴァルキュリア イン キッチンⅡeternal
 斎賀は自分の目の前に突如現れたF.S.Iを名乗る男、羽村との電話を切って大きくため息をついた。


 今まで紗矢子を見守ってきたつもりが、ただ紗矢子から逃げていただけだと、斎賀は後悔の念で押しつぶされそうになっていた。


 強引にでも紗矢子の行動を止めるべきだった。


 それほど斎賀の中で、紗矢子の存在は大きなものになっていた。



 斎賀はぼんやりと窓の外を見つめ、先程自分の近くに座っていた女性が店から出て目の前を横切るのをなんとなく見ていた。


 今時の若い女性にしては地味だと思った。


 けれど、清楚に着こなしている服装はけして野暮には見えなかった。


 むしろシンプルで好感が持てた。



「……」



 斎賀はもう一度ため息をついて、再び煙草に火を点けた。
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