ヴァルキュリア イン キッチンⅡeternal
 奈津美は後部座席のドアを満面の笑顔で開けた。

 奈央が乗り込むと、スーツ姿の若い男が運転席に座っていた。


「あ、あのすみません乗せてもらっちゃって……」



「……」



 奈央が挨拶をしても、その男は無愛想に軽く会釈をするだけだった。


 奈央は怪訝に思いながら腕時計に目を落した。


『四時か……今から行けば手続きしてちょうどいいくらいかな、もう一条さんはホテルにきてるのかな……』



 そんな事を思いながら窓の外を眺めていると、ポツリポツリと雫がウィンドウガラスを濡らし始めた。

 雨が降ってきた事を奈津美に言おうとしたが、奈津美は携帯で誰かと話している様子で、奈央はでかかった世間話を飲み込んだ。
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