ヴァルキュリア イン キッチンⅡeternal
「私は今仕事が楽しいの、だから結婚もしない」



「……え?」



「今ね、ワインを海外から仕入れる商社に勤めてるの、実はここのレストランのワインもうちから買ってもらってるのよ」




 そういえば紗矢子は語学堪能で、大学在学中に何年か留学していたはずだ。




「そうなんだ、やっぱり語学を生かした仕事に就いたんだね。すごいな……」



「何言ってるの! 奈央だって、昔から料理の才能があったじゃない、天下のアルページュシェフなんて出世コースね」



 紗矢子はにっこり笑ってワイングラスを傾ける。



「彼氏……とかいないの?」



「彼氏? ああ、そういうのもうめんどくさくて……実はこっちに転勤になる一ヶ月前に別れたの、車すっとばせば二時間で会える距離なのに、遠距離するなら結婚しようって」




 紗矢子の元彼氏は同じ支社に務める二つ年上の先輩で、紗矢子とは二年交際していたが彼女の転勤を機にプロポーズしたらしい。




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