ヴァルキュリア イン キッチンⅡeternal
 時刻は六時半、まだコンテスト開始から三十分しか経っていない。


 わずかな希望を胸に奈央は道なりに走った。



『もう! こうなったら、走ってアルバンホテルに行くしかない!』




 指がかじかんで感覚は既にない。

 濡れて張り付く前髪を拭って、奈央は走った。


 冷たい冷気が気管を通って肺に突き刺さる。



 髪の毛も乱れに乱れ、鼻水だって出ているかもしれない。

 こんな姿誰にも見られたくない……。


 普段の奈央ならそう思うだろう、けれど、今の奈央はなりふり構っていられなかった。


 雪は奈央に試練を与えるように容赦なく降り続いて、夜の帳も落ちてきた。
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