ヴァルキュリア イン キッチンⅡeternal
 雪も降り積もり、さすがに大通りに出ても人の気配がなかった。

 たまにタクシーが通りがかったが、客の乗っている後部座席を見ては落胆する。


「きゃあ!」



 タクシーのテールランプを見送って、気を取り直して走り出そうとした時、足を滑らせた。


 前のめりに倒れ込んで鞄の中身が散乱してしまう。

 寒さで感覚が麻痺していたために痛みはあまり感じないのは幸いだった。


 顔に張り付いた雪の冷たさが奈央の意識を奮い立たせた。


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