ヴァルキュリア イン キッチンⅡeternal
 ぐっと雪を握り締めると、手の内でじゅわりと溶けて水になる。

 この年になって、雪にまみれて大胆に転ぶなんてと思うと滑稽に思えてきた。

 起き上がれずにいる奈央の背中に容赦なく雪が降りかかる。


「っ、うっ……」


 惨めすぎてやるせない、押しこめられた感情が今にも狂いだしそうになって、それを無理矢理押さえつけると自然と涙が溢れてきた。


「……」


 その時、前方に人の気配をうっすらと感じ、奈央は我に返った。


 雪を踏みしめる足音がその先で止まった。


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