ヴァルキュリア イン キッチンⅡeternal
 エレベーターの中で一条に迫った時、彼はもう自分から逃げられないと思った。

 コンテストに代理で連名参加をすると言った時、紗矢子は背筋が凍るくらいの一条の瞳に射抜かれた。


 鋭利な眦と、憤りを腹の底で抑えこんで耐え忍んでいるかのような鬼気迫るものを感じた。



 あいつが参加できないコンテストは価値がない。

 無意味なコンテストに時間を費やすほど、俺は暇じゃない―――。




 そう言って一条は紗矢子を振り切ってホテルを飛び出した。


 紗矢子は一条の背中を呆然と見送ることしかできなかったが、今思うとあの時羨ましいと思ったのではないかと思う。
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