ヴｧﾙｷｭﾘｱ ｲﾝ ｷｯﾁﾝⅡeternal
「一条シェフ！　もう、こんなところにいたんですか？　早く戻って……あ」



　タイミングがいいのか悪いのか、一条はため息をついて背中から声をかけてきた奈央に向き直った。


　奈央の視線は一条ではなく、すぐにその向こうの男性に向けられていたのを見て、一条はその男が奈央も知っている人物なのだと悟った。




「春日さん……ですか？」




　斎賀は奈央の胸の名札を見て、この女性が紗矢子の言っている親友の春日奈央なのだと気づいた。


　奈央は斎賀に視線を向けてはいたがすぐに言葉が出てこなかった。



『……この人、どっかで』



　奈央の記憶が高速で巻き戻される。斎賀は一度見たら忘れられないような雰囲気のある風貌だったため、奈央の記憶の中の斎賀はすぐに検索ヒットした。




「すみません、突然……私は神崎紗矢子の知り合いの者で……その、先日は……」




　本人は知り合いだと謙遜していたが、奈央があのカフェで斎賀を見かけた時はそんな希薄な関係には見えなかった。



　斎賀は先日のクリスマスコンテストのことを言いかけて言葉を濁した。




「紗矢子は……紗矢子は今どうしてるんですか？」



　助け舟を出すように奈央が斎賀に問いかけると、一瞬間を置いて斎賀は静かに口を開いた。



「彼女は今留置所です」



「……え？」
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