ヴｧﾙｷｭﾘｱ ｲﾝ ｷｯﾁﾝⅡeternal

「おい、お前の相棒はどうした？　……なんでそんなもん使ってんだよ？」



「ッ！？　い、一条さん？！」



　血玉を舐めようと口に持っていこうとした時、後頭部から低い声で声を掛けられ奈央は驚いて身体を反転させた。



「……」



　一条は何も言わずに台に置いてある奈央のシェフナイフの姿を見て経緯を察したようで、腕を組みながらため息をついた。




「あ、あの……おかえりなさい。戻ってたんですね」




「そのナイフ……」




「ああ、これ、ちょっと落としてしまって……だいぶ年季入ってたものだし、そろそろ買い替えと思っていたので―――」



「見せてみろ」



　一条は奈央の屍のようなナイフを取り上げ、丹念に刃を吟味していた。



「だいぶ重症だなこれは、で、お前がナイフを落とすなんて……何があったんだ？」




「何も……ただ三井さんと話してて、気がつかないうちに落ちてしまったんだと思います」



「……ふぅん、まぁいい。このナイフ一晩俺に預けろ」



「……え？」



　奈央がその言葉に呆然としていると、一条は男性用の手に合わないナイフで懸命に皮むきに励んでいた奈央に小さく笑った。